1、閖上側溝捜索
2013年3月~2015年3月にかけて、甚大な被害を受けた名取市閖上地区のすべての雨水側溝内を捜索
2、閖上浜地中レーダー探査捜索
2014年9月~現在、津波で砂浜に埋まっている可能性のある手掛かりの捜索(仙台高専園田教授協働)
3、嵩上げ工事内の捜索
2015年2月~閖上地区復興土地区画整理事業に伴う不明者捜索(事業請負民間業者協働)
4、嵩上げ工事外の捜索
海中捜索、水門捜索、その他(宮城県行方不明者捜索チーム他協働)
5、さまざまな捜索手法の挑戦
魚群探知機による捜索とドローン活用の捜索
閖上側溝捜索 ~きっかけはご家族の声と捜していない側溝~
私たちが捜索をはじめたきっかけは、当時8カ月のお子様とお母様が行方不明になられてたご家族から、もう誰も家族を捜すことをしてくれないという声と震災直後閖上では公的捜索はおこなわれたが小さな側溝には入り込まないとして雨水側溝などの捜索はおこなっていなかったことがきっかけでした。
そのきっかけから閖上地区のすべての側溝を捜索することを2013年3月9日から開始しました。
・側溝の距離は想像もできません(何年掛かるのか?)
【現場調査】 距離を測定(35km)、GIS(地理情報システム)活用することにしました。
・限られた人数(2~10名程度)
【人員想定】 延べ人数6,000人を想定しました
・途方もない距離を地道に進めるしかない
【目標を設定】 活動期間を2年に設定しました
・迫る被災地市街地復興土地整理区画事業(まちづくり)
【達成する覚悟】 事業着工前までに必ず完了させる強い意志を固めました
このように厳しい状況であったため、6000人もの協力者を集めなくてはならず、フェイスブックを活用したボランティア受入方法の構築をしてスタッフ管理業務を省いた参加者主導の活動方法立案しました。通常、ボランティアの受け入れというものはスタッフが必ずセンターで受け入れを行い説明や報告を受け管理していくものなのですが私たちは参加者自身がフェイスブックで活動日や人数を調整して登録し、2人以上集まれば短時間でも参加できる方法を用いました。
閖上側溝捜索 ~距離37.11km、延人数6,684人。2年で完了~
捜索箇所のデータ管理は、側溝捜索の進捗状況や手を付けていない側溝の位置などを示す地図を毎回作成しフェイスブックで共有し合いました。活動日数が280日ほどですので振り返りますと大変な作業量でした。それらの情報をGISに記録しデータベース化しております。
閖上側溝捜索の評価と反省としまして、
① 当嵩上げ工事着工前までに確認することができた。実距離37.11km、実延べ人数6,684人。2年で完了することができました。
これは開始時点の予測とほぼ一致しております。人の手で丁寧に捜索できたことの意味は大きい
② 長期間活動したことで、地元住民とのつながりや情報などを入手し易い環境が整えられました。
当時の状況や捜索特定エリアの検討を行うことができました。
③ 役所、警察、工事業者などの公的機関と関係重視しました。
その結果、私たちが捜した側溝捜索が100%確実な捜索だとは思っていませんので、
再確認する意味での工事業者と連携したダブルチェック捜索や集中捜索の実施を実現。
④ GoogleEarthを活用した情報の一元管理を行うことによる今後の予測や自治体への交渉説明に有効利用
実績をコツコツ情報記録しておくことの重要性を再確認しました。
反省点としましては、側溝捜索で約150ものお骨を発見しているのですが、人のものだと鑑定されたのは1つのみで、その手掛かりもDNA鑑定では鑑定できないものであったことが、もっとも悔やまれる結果です。
また、6,684人を超える皆さんにお手伝いいただきましたが、3名に方が軽傷をおいました。今後続く活動の中では事故や怪我をゼロにするよう努力します。
海中捜索 ~宮城県行方不明者チームとの出会い~
閖上で捜索をはじめた2013年からこれまでの間、ずっと気になっていたのが閖上の街に隣接する閖上港と広浦湾でした。
何も手を付けられなかったのがこの海でした。
気になっているだけで、私たちには海に潜るすべがありませんでした。
情報を得ようと海上保安庁などに足を運び、どこをどう探したのか、海中は震災でどうなっているのかを聞きに行ったりしていました。
しかし、捜したという一言だけで、何人で何回捜したということさえ教えてもらえませんでした。
そんな時期に仲間からの紹介で、宮城県行方不明者捜索チームとの出会いがあり、2016年9月29日に初めて海中の様子を確認することができました。
その初めて捜索した場所ですが、
1カ所目が、広浦湾の一番深いとされる水深12mの増田川河口付近
2ヶ所目が、その対岸にあたる閖上浜側の水深9Mの付近
3ヵ所目が、閖上朝市前スロープの水深2.5M付近。これは別の情報網から得た沈船らしきものが見えた場所だったため捜しました。
最後に捜索したのが閖上港の水深6Mの場所です。
この閖上港の場所は3DSSという海底調査用の3Dサイドスキャンソナーで探査した際にコンテナのような形のものが写った場所でしたので潜水捜索を行いました。
実際の海底の様子は物凄い量のヘドロが堆積していました。人の腕が肩までズッポリと入ってしまうほどヘドロが堆積していたのです。
この潜水捜索では不明者の手掛かりになるものは発見できませんでしたが宮城県行方不明者捜索チームと協働し状況を確認できたという点で、何もできない状況にあった私たちにとってこれからの捜索の希望となる大きな捜索活動になりました。
知恵と継続
先ほど3DSSという海底調査用の3Dサイドスキャンソナーのお話をしましたが、左下の画像が3DSSの本体です。
とてもコンパクトな機械です。この機械を船体に取付、船を進めるだけで海底の様子が映し出される最先端な技術です。
実際に閖上で探査した際の映像が下中央が3D映像で、右下が2Dの映像となります。
3D、2Dが同時にリアルタイムで映し出されます。
条件によりますが、海底を幅250Mを一気に3Dスキャンすることできるとても捜索に有効な機器と感じています。
(株)SEA様の協力で2月と5月に閖上と女川湾でデモンストレーションを開催させていただきました。
海中捜索の今後の予定として、将来的には3DSS実機を手に入れ(出資者募集中)閖上の広浦湾を3DSSで全域スキャンしたいと考えています。
並行して、ヘドロの堆積量を把握しながら、仙台高専と連携し海中版地中レーダ探査を実施した上で可能性の高いエリアを宮城県捜索チームと協働し潜水捜索を実施していきたいと考えています。
広浦湾、貞山運河、閖上浜における捜索方法
オレンジの部分がかさ上げ工事エリア、ピンクの部分が閖上浜エリア、赤い線が貞山運河、そして、青い部分が広浦湾です。
活動範囲としましては、約4~5kmになります。
この地図をイメージしながら、以降の内容をお読みください。
さまざまな捜索手法の挑戦
以下の3項目が、かさ上げ工事区域外での捜索活動です。
2020年度以降に推進し、「さまざまな挑戦」と題しまして、活動していく捜索手法になります。
広浦湾のデプスマッピングと海底調査 2020年2月より開始しております。
貞山運河浚渫工事に伴う行方不明者捜索、現在、開始時期は未定です。
ドローン活用による捜索手法の開発協力、昨年の2月より開始しております。
広浦湾デプスマッピングと海底調査
広浦湾デプスマッピングと海底調査について。
STEPでは、ホンデックス社製の魚群探知機HE-9000を導入しました。
小型ボート船上より、デプスマッピング®と、サイドスキャン、ワイドスキャンによる海底調査を行います。
HE-9000は、GPSプロッターによるデプスマッピング機能、サイドスキャン(400kHz)と、ワイドスキャン(400kHz)、 一般的な2Dの魚群探知(200kHz)、水温センサーなどの多くの機能を搭載した多機能オールラウンドなタイプの魚群探知機です。
モニターに、ひとつの機能の表示だけでなく、複数の機能を同時に表示することが可能です。
(※機能説明は、ホンデックスのサイトよりの引用)
特徴①:サイドスキャン
代表的な一つ目の特徴といたしましては、サイドスキャンという機能です。
サイドスキャンは、横方向に広く、前後には極めて狭いビームを左右に発射して、広範囲を細かく切り刻むようにスキャンして作り出される映像です。
ボートをゆっくりと走らせることで、水中写真のような映像が得られます。
上記画像は、デモを行わせていただいた、SEA社の3DSSとHE9000との比較です。
左の画像が3DSSのサイドスキャン画像、右側がHE9000のサイドスキャン画像です。
ご覧のように、鮮明さではHE9000の方が落ちるものの、十分水底の様子を見ることができます。
カタログ値では、感度設定により、水深40mまでの測定が可能となっております。
特徴②:ワイドスキャン
二つ目の特徴といたしまして、ワイドスキャンについてです。
サイドスキャンの情報に、深さの情報を組み合わせて、3D的な画面表示をしてくれる機能です。
船上でサイドスキャン画面を見ると、低層にあるように見える物体が、ワイドスキャン画面上では、中層にあることが確認できます。
特徴③:GPSプロッター(デプスマッピングⓇ)
三つ目の特徴は、GPSプロッター、デプスマッピング®です。
魚群探知の深度情報と、GPSの位置情報を利用して、モニター画面の地図上に、海底の地形を描写する機能です。
デプスマッピングはホンデックス社の標章登録です。他メーカーでは、同じ機能でも、名称が異なります。
デプスマッピング®では、一般的な地図では表現されない、海底の起伏や漁礁などが等高線のように可視化できます。
得られたデータをもとに、最深50mまでを深さ50㎝間隔で色分けして表示します。
左上の画像のように、ボートの進行に伴って得られた帯状のデータを、右上の画像のように合成して、海底の地形を描写していきます。
2020年の挑戦
・閖上地区広浦湾においてデプスマッピング® による海底深度地図化を実施
→行方不明者の手掛かり発見に伴うヒントを捜す。
・デプスマッピング等のデータ変換し、外部アプリ開発活用にチャレンジ。
(現状はビデオ撮影のみ。映像外部出力不可能)
・閖上地区での実績をもとに女川湾で試行。
貞山運河浚渫工事に伴う捜索
貞山運河浚渫工事に伴う捜索についてです。
閖上から南への貞山運河を、船舶が往来できるように浚渫しようという計画があり、仙台土木事務所が発注しております。
幅24m、船舶航行に必要な深さ、海抜マイナス1.4mの浚渫工事で、それに伴い、土砂3980立方メートルが発生します。
その土砂を、私たちの手で捜索確認できないものかと考えております。
仮設の土砂置き場、施工ヤードは3か所設定されており、ヤード①はSTEP機材倉庫PALに隣接しております。
・側溝捜索を超える土砂を人海戦術で捜索する。
・STEP機材倉庫PALと隣接しているため移動手間が
少なくスムーズに捜索が可能。
・人員確保が課題。
〔現状〕
・施工ヤード①の範囲をSTEPが捜索したい旨を名取市を
通じて仙台土木事務所に相談中。
・台風19号の影響で工事が遅れている。
・新型コロナウィルスの影響で遅れている。
ドローン活用による捜索手法の開発協力
園田研究室、金澤研究室が行っておられる調査研究において、月1~2回。ドローンでの空撮を協力しています。
高度10mで340m×100m=34,000平方メートルを実施しています。3.4haの範囲を空撮に、概ね3時間かかります。
ドローンで自動定点空撮したデータをアップロードし、豊橋技術科学大学 金澤研究室に送る流れです。
金澤研究室の意向により2020年も継続実施
仙台高等専門学校の園田研究室の意向により、定点空撮範囲の拡大も行います。
小型ドローン導入により機動力をアップさせます。
最大高度30mで図のような広範囲での撮影を行います。
2020年よりSTEPが代行しておりますが、すでに、仙台空港事務所運行情報官、仙台国際空港飛行場情報チーム、仙台空港管制への飛行申請手続きも完了しております。
2020年度以降の捜索活動予定
最後に私共STEPの活動予定は第2日曜日中心となります。
貞山運河の浚渫土砂捜索が始まるまでは、閖上浜の表層捜索をいたします。
捜しきれていない場所はまだまだあります。みつける為の技術もまだまだあると考えています。
知恵を出し合い、協働しながらあきらめずに捜索活動を行なっていきたいと思います。
捜索手法の挑戦を継続
2020年の協議会で「さまざまな捜索手法の挑戦」としまして、ご報告いたしました。
2021年は、以下の三項目についておさらいしながら一年間どのような取り組みを進めてきたかかをご説明いたします。
広浦湾デプスマッピングⓇと海底調査
最初に、広浦湾のデプスマッピングと海底調査についてです。
赤い線で囲った部分が広浦湾ですが、このエリアを魚群探知機を活用して、海底深度地図化を実施しますと昨年申し上げていました。
実施回数としては2月~9月の間に6回調査しました。その中で、マッピングできた割合は全体の二割にとどまっています。
中々進まなかった理由としましては、仙台空港前の貞山運河に津波で流出したであろう車3台が沈んでいるという情報を得まして
この車を魚群探知機HE9000で写せないかの実証実験調査を進めていたからになります。
ご覧のオレンジ色に表示されている画像が実際に探査した画面になります。
3回いどみましたが、明確な車の発見には、いたりませんでした。
移動しながらの物体の識別は高度な経験値が必要であると実感しました。
HE9000の記録情報を外部媒体に取り出しアプリ開発ができないかチャレンジしてみようとお話しさせていただいていましたが
魚群探知機メーカーからの回答が得られなくなり、データを取り出すことすらまだできていない状況です。
引き続きチャレンジしていきます。
女川湾でのデプスマッピング試行についてですが、こちらは実現できていません。
海での実施は陸高の広田湾水深5m程度の場所では把握できましたので
女川湾のような深い海の調査は試みたいと思っていますので、ご協力よろしくお願いいたします。
貞山運河浚渫工事に伴う捜索
貞山運河浚渫工事に伴う捜索についてです。
次に、貞山運河浚渫工事に伴う捜索についてです。
閖上から南への貞山運河を、船舶が往来できるように幅24m、船舶航行に必要な深さ、海抜マイナス1.4mの浚渫する工事で
その土砂を捜索確認できないものかとお話ししていました。
施工ヤード①は業者と連携し捜索完了しています。
名前入りの証明カードなどが発見されました。(こちらの身元は生存者という事でした)
・施工ヤード浚渫土砂について
✔固くスコップで掘れない。
✔地中レーダで確認もしにくい。
✔捜索後の土砂置場がない。
✔手が出せない状況が続いている。
特養うらやす裏手に仮置き場があり、下の画像のように高さ3m~4mで盛られています。
実際に掘ってみましたが、固くスコップで掘れない状況です。
地中レーダでも確認してみましたが人工的に盛られた土砂なので、
反応が複雑で確認すずらい状況でした。
仮に掘ることが出来たとしても、捜索後の土砂置場がないく、手が出せない状況が続いています。
・施工ヤード②、③
✔「手掛かりの発見無し」と浚渫業者から報告あり。
広範囲の表層捜索
2020年度の捜索の後半に主軸となった捜索活動が、閖上浜~阿武隈川まで歩いて捜す、広範囲の表層捜索です。
この7年間の捜索で仙台空港までは何度も捜していましたが、仙台空港から南への捜索は全く行ってきませんでした。
2020年11月に閖上浜を2.5km。12月に仙台空港前を1.85km
仙台空港前付近は砂浜が広がります。
女川から流出したヤマホンさんの軽トラックの荷台扉が漂着していました。
2021年1月に千年希望の丘前を1.78km
千年希望の丘付近は石がおおくあります。
2月に岩沼の海岸3kmを捜しました。
ご覧のようなテトラポット帯が永遠続き、地面も砂浜ではなくゴロタ石が敷き詰められており歩きづらいです。
南側では、これまででは珍しく、イルカの頭蓋骨も漂着していました。
ということで、合計9.13kmの表層捜索を行いました。阿武隈川までは残り約4kmとなります。
漂着の可能性はゼロではないと感じており、まずは阿武隈川まで歩いて捜すことを継続していきます。
並行して、ドローンによる空撮探査も飛行許可申請し問題なく飛行できる許可を得られましたので仙台高専と協力しながら進めていきます。
活動参加人数の推移 ~コロナ過で県外参加者が減少~
活動参加人数の推移をざっくりグラフ化してみました。
STEPとしての活動は、側溝捜索が完了しました、2015年以降は、月に一度の定例活動に切り替えました。
このグラフは、2015年以降の集計で、横軸が年度単位で、縦軸が参加人数となります。
縦軸の棒グラブ緑色がン宮城県内の参加者で、オレンジ色が宮城県外の参加者の人数となります。
そして、赤の折れ線グラフが県内県外の合計活動人数となります。
これらをよく見ますと、側溝捜索が行われていた2015年までは県外からの参加者が上回っておりました。
2016年から2019年までの地中レーダ探査捜索を進めていた4年間は、県内県外が同等の人数で推移。
2020年からは新型コロナの影響もあり、県外からの参加数が激減していることが分かります。
全体の推移も2017年を皮切りに、急こう配で減少。2015年からは1/10にまで減少しており、2014年の参加者合計は4000名を超えていましたので1/100にまで減少しています。
新型コロナの終息を待って、県外からの参加者を受入られるよう判断していきたいと考えていますが、
2014年の時のようなとてつもない人数での活動は無いと思いますので、少ない人数で、どのように丁寧に捜していけるかが今後の課題となると思っています。
2021年度の捜索活動予定
最後に私共STEPの活動予定についてです。
今年度も第2日曜日中心となります。閖上浜~阿武隈川までの表層捜索を主に進めながら、丸森町の行方不明者も捜す予定です。
ご協力よろしくお願いいたします。
2021年度定期活動:毎月第2日曜日
閖上
丸森